放浪の甲斐犬は今どこに!   (61)
2004年3月15日(月)晴れ
 昨年の夏前だったと思うのであるが(年のせいか記憶がはっきりしない)近所に甲斐犬の兄弟子犬がうろついているらしいと聞き毎日散歩コースを変えて捜していたら時々見かけるようになったのである。うちのハチ姫には友達もなく自分が犬であることも理解していないようなところがあるので仲良くなれたらいいなと思っていたのであるがいつ出会っても人間に警戒心を抱いていて2・30メートルからは絶対近づかないのである。弟犬か妹犬かわからないが小さい方は少し興味がありそうな顔でじっとこちらをみたりするのであるがお兄ちゃん犬がその様子を心配そうに少し離れたところから見ていてしばらくすると二匹の犬は連れ添って視界から消えてしまうという繰り返しでいつしかその姿も見なくなってしまった。
 秋になって以前とは違う場所で一匹だけ見かけたときにはもう成犬に近く警戒心も更に強くなっていてハチ姫のお友達にするのは無理とあきらめてしまった。もしかしたら一匹は誰かに拾われたか車にでも轢かれてしまったのだろうかと思っていつしか話題にも上らなくなってしまったのである。ところがつい先ごろそういえばあの甲斐犬どうしたかしらとふと思い出した矢先のことである。いたのである。しかも二匹いやもしかすると三匹なのであるがそれもケイトのすぐ前の原っぱにである。朝早く黒い犬が原っぱの向こうの端でじゃれあっていたので目を凝らしてみると二匹なのか三匹なのかはっきりしないのであるがその姿は間違いなくあの甲斐犬である。今年の冬は暖冬だったとはいえ標高1000mの厳しい冬をどうやって越したのであろうか。甲斐犬は雪の中でも寝ると聞いていたので強くたくましい犬だということは知ってはいても現実に冬を越した犬を見て改めて感心するばかりである。といっても果たしてこの犬達があの去年の犬かどうかはわからないとケイト氏は言うのであるがMrs.ケイトは信じて疑わない。しかしこの犬が二匹なのか三匹なのかはいまだはっきりしないのである。お客さまは三匹見たと言いMrs.ケイトも三つの黒い影を確かに見たことは見たのであるが目が悪いので三っつ目は黒い物体としかわからなかったのである。そしてその日の日中見た時には二匹だけであった。更に疑問なのは昨年見かけた時には間違いなく子犬だったので兄弟犬だと思っていたのであるがもしそうだとすると兄弟で子供が出来るのであろうか。いずれにせよだんだんケイトに近づいてきているということは何かの引き合わせかもしれないと思い昨日は餌と水を草むらに置いてきたのであるが果たして食べてくれるであろうか。甲斐犬はとても警戒心が強く飼い主以外の人は絶対そばに寄せ付けないと言われているのである。ましてこの一年余り幼い兄弟だけで生きてきたとすればもはや人間不信に陥っている筈なのである。翌日餌を置いたところに行って見ると食べた形跡も無く又忽然と姿を消してしまった。長い放浪生活で身を守るすべは同じ場所に定住しないということなのであろうか。それでもMrs.ケイトはわずかな期待を込めて今日もポケットに餌を忍ばせ散歩に出かけるのである。

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